赤穂市フィールドワーク

2022.9.5~6


絵になる町、赤穂

/田中 然

 

     赤穂に初めて足を踏み入れて感じた事は「雰囲気いいな。」という事だ。特別インスタ映えするスポットがある訳でもなく、ただ山や川、海があるだけなのだが、その一つ一つが何故か風情があり、夕方の17時頃になると懐かしいオレンジの光が町全体を包み込み、ゆったりとした時間が流れ、柔らかい雰囲気となっていた。海の近くの木々と空と月のコントラストは、はっきりとしており、自分が主人公になったかのような気持ちになった。何気ない風景なのだが、自然と懐かしい気持ちにさせてくれるというのは、赤穂市が今後売りにしてもいいのではと感じた。台風が近づいていたのもあり、天候に荒れはあったが、赤穂の自然に触れて充実した日を過ごすことができた。自分が映画の舞台に立ったかのような坂越の街並みは、空の青さも相まって素敵な雰囲気を醸し出していた。すべての街並みが私にとって居心地がよく、どこを撮っても素敵な絵となっていた。

 

 

赤穂緞通

     赤穂の代表的な伝統工芸品である緞通を見学し、実際に体験をしてみた。初めの印象は、長くても2.3日で終わる簡単な伝統的編み物だと考えていた。しかし、実際に体験をしてみて、指先を細かく使い、1本1本手作業で編んでいく作業であり、想像していた倍の時間が人の手によって作られていると知った。その人の努力の結晶が商品として価値を生み出していると考えると、値段が高くなるのにも納得がいくと感じた。また、赤穂緞通に魅せられ、九州から修行に来られた方と会うことが出来た。初対面では控えめな印象があったが、話していくうちに赤穂緞通への思いや楽しんで伝統工芸を作っていると感じられた。緞通の体験をしてみて、少しの時間だけでも指が痛く、これを毎日長時間行っていると考えると、本当に尊敬する。

     講義を受け感じた事は、これだけ素晴らしい工芸品を作っているのにも関わらず、日本でも赤穂緞通について認識がない人が多いのは残念だと感じた。この事実は、逆の解釈からすれば、まだまだ世間に知らせることが出来る伸び代だと考えている。また、体験を通して、1つが完成するまでの職人の苦労が理解出来ないと、赤穂緞通が高いと感じてしまうのかもしれない。どのように作られ、どのような気持ちで作られているのかを上手く伝え、それを日本だけででなく、海外の富裕層の方々にも刺されば、伝統繁栄に繋がるきっかけになるのではないか。

 

赤穂の塩

 

     赤穂は緞通だけでなく塩も有名らしい。先程の赤穂緞通は女性が主に作り、男性は外で塩を作るという役割であったらしい。普段自分達が口にしている調味料が一体どのように作られているのか、実際に目で見て、手を使って自ら生み出すことに価値があり、それを上手くプロモーションしていくことで、塩に対しての価値観が上がるのではないか。また、自ら作った塩をご飯に振りかけ食べる機会があった。辛みはあまりなく、まろやかで、白米の旨みが引き立つような気がした。実際、自分の手で作った料理が美味しいと感じる心理がこの塩体験でも起きているのかもしれない。この効果を使って多くの人が赤穂の塩は他と違う!と感じて貰う事が出来れば、今後の赤穂のメリットにもなる。

     塩に関して、ある程度作る工程や知識は理解出来たが、正直それが本当に地域を宣伝する強みになるのかはよく分からない。塩に対して相当な興味がある人でない限り、塩だけで赤穂に行こう!とは中々ならないと考える。塩に関しては多くのライバル地域がおり、その中でどのように生き残れるか。塩をメインで考えてしまうのではなく、別のコンテンツを交えながら塩もPRすることで、同時に赤穂市の魅力を語れるのではないか。

 

 

     初めて赤穂を訪れ、市役所の方々の優しさや、どのようにすれば赤穂の良さを伝えられるかを真剣に考えている姿がとても印象にある。今回は、赤穂市の改善すべき点を書いたが、これは自身の中でこれだけ良い街並みが残っている赤穂市がより良くなってほしいという気持ちが強く、書かせていただいた。自分ができることは、この経験を赤穂を知らない人に伝え、その人達がまた他の人に伝える事だと思う。実際に足を運び経験することで、初めて伝える事ができることがあり、新たな人生の思い出として刻まれると考える。改めて自身がYDHに入り、観光のリアルな問題点を実際訪れてみて考えることの重要さや議論をすることの大切さを感じた。