丹波篠山市フィールドワーク

2022.9.13~14


非日常で人生を考えよう

篠田 帆乃香

 

今回の里山アカデミーで印象に残っていることは「ヒト」である。農業、林業、猟、宿泊業など、様々な働き方で今を生きている人々に会ってきた。どの方も楽しさややりがいを感じながら一生懸命に生きているように感じた。そのような働き方を見ていると自分自身の将来について深く考えさせられた。働き方は一つではなく、また、何のために働くのか、自分は働く上で何を優先させたいのか、改めて見つめなおすきっかけとなった。このような気づきを必要としている人はたくさんいるのではないだろうか。進路に悩む高校生や大学生。また、就職したがその働き方に疑問を感じている社会人、社員の働き方や企業の社会的地位を考えていかなければならない企業トップの方々。里山アカデミーは「里山の暮らしを」知ってもらうためだけのツールではないことを感じた。丹波篠山という里山で暮らす人々との交流を通し、人生観までも変えてしまう大きなプロジェクトであると考える。

 

特に私が里山アカデミーを通して今後大切にしたいと思ったことは、人とのつながりだ。まず、里山の暮らしは、独力ではなく地域における助け合いや生業同士のつながりによって成り立つことを感じた。私たち人間の暮らす里の周りにはノラがあり、その向こうに山が広がっている。しかし近年はこのノラの部分が狭まってきており、野生動物による農作物への被害が絶えない。実際に、訪問した前日に対策用の電気柵に電気が流れていなかったことで、鹿が枝豆畑に入り込み畑が荒らされてしまったというお話を伺った。農業は里山で暮らす人々の生活を支える大きな収入源となる。そのため農業への獣害を防ぐためにも猟師の存在が必要なのだ。ここで農業と猟師の助け合いによるつながりが里を守っていることを感じた。

 

また、宿泊させていただいた集落丸山では、朝食の提供は集落内のお母さん方の当番制で成り立っているとおっしゃっていた。さらに、夕食は別の民宿を営んでいるおかみさんが出向いて振舞ってくれた。一泊するだけでも多くの人々の助け合いを感じることができる。またこのような地域内でのつながりがあることで、今度丹波篠山を訪れたときは、あの時夕飯を用意してくれた、あのおかみさんがいる民宿に泊まろうなどというように、次の機会へとつながる可能性も考えられる。助け合い、補い合いがより良い暮らしや新たな機会へと導いてくれることを実感した。

 

こういった助け合いやつながりは、里山で暮らすことに限らず重要となるだろう。人は一人では生きていくことはできない。誰かと互いに足りないところを補い合うことで生きていくことができるのだと思う。里山アカデミーはこういった気づきを与えてくれる場としてとても効果的であると感じた。

 

 

 

 

さらにこのようなつながりを形成するきっかけを与えてくれる存在も今回発見した。それは、「mocca」である。半壊した空き家を改装してつくられた施設で、モノづくりができる工場やカフェ、コワーキングスペース、宿泊部屋などが併設されている。コモンズメンバーになることでお得な特典もあるなど、とても魅力的な施設であると感じた。この施設の最大の魅力は人と人をつなげてくれることであると感じた。滞在により地元と外部が触れ合い、多様な個性を持つ人々が互いの視点を交換できる場となることで、新しい価値が生まれるかもしれない。また、会員メンバー同士で施設をこうしたいと考えて実践していくことができ、強いつながりが根付いていくのではないかと可能性を感じた。「mocca」は人同士を巡り合わせ、そのヒトとヒトとをマッチングさせる場として今後活躍していくと感じた。

 

里山アカデミーは、今後生きるうえで何を大切にしたいのか自分を見つめなおす良い機会になる。「自分探し」という言葉があるが、里山アカデミーでもそれが可能であると考える。今回私は、働き方に結び付けて今後の自分自身の生き方について考えることができた。また、つながりが生む今後の可能性についても向き合うことができた。これらのことから、里山アカデミーはこれまでの固定概念にとらわれず、里山での非日常が様々な気づきを与えてくれることを体感した。「人生の学び」をキーワードとして自分自身の将来に迷う人々へアプローチしていくと良いのではないかと考える。