「観光甲子園」取材レポート

2021.2.7

江藤誠晃が統括プロデューサーを務める「観光甲子園」の決勝大会を取材。全国入賞高等学校をネットワークしたリモート開催イベントの中継本部で高校生のプレゼンテーションを見学しました。

 

参考ページ…
https://www.nexttourism-contest.jp

 

網歩乃佳/国際教養大学

 

 

<訪日観光部門>

■観光甲子園の感想

決勝戦のみの見学となったが、3部門計14チームの作品を通して高校生のSDGsにおける理解度に圧倒された。どの作品も、SDGsは考慮されている一方で持続可能性が観光の主役として主張されすぎず、あくまでチームで考える観光資源を支えるものとして考えられている点に驚いた。

 

■訪日部門に対する感想

3つある部門の中でもエントリー数が最も多いこともあり、決勝に進んだ6チームの作品すべての内容やクオリティに圧倒された。その土地で見られる自然の色に焦点を当て、四季や風景を色で楽しむチーム、環境や地元住民との交流に着目した観光、日本の食育について学ぶ観光、伝統工芸品に触れる観光、観光公害に負けない体験型の観光など、「インバウンドの人をターゲットとした持続的な観光」という一つの目標に対する多様なアプローチを目にすることが出来た。

1点疑問に思った点を挙げるとすると、訪日観光における定義づけである。私自身、訪日観光とは外国人観光客の視点で、動画で紹介されたような体験を日本で実際にしたいかどうかが基準になるのではないかと考えている。しかし、この部門の評価は日本人によって行われており、日本人視点で考える主観的なインバウンドのためのPR動画という風にも捉えられるのではないかと感じた。客観的な視点を取り入れることで次回からの観光甲子園ではさらに実現性の高く独創的な作品が生まれるのではないかと思う。

 

■グランプリチームに対する感想

訪日観光部門全6チームのプレゼンテーションとエントリー動画を視聴し、浜松学芸高校 社会科学部地域調査班がチームの中で唯一観光資源を題材に含んでいないことに気が付いた。“注染浴衣”というその土地ならではの芸術と日常の風景を見事に織り交ぜ、日本独特の「侘び・寂び・粋」というシンプルかつ奥深い言葉を見事に表現していたと思う。また、審査員の関西観光教育コンソーシアムの西村先生の講評でもあったように昔は部屋着として着られ、海外の人にとっても部屋着という印象のある“浴衣”をアートに捉え、日常の風景と合わせることで浴衣が芸術的で、外でも着られる服であることを外国人に広めていこうとする姿がとても伝わってきた。

さらに、社会科学部地域調査班は普段から地域について発信している。それもあってか、今回作成された動画も主役の“浴衣”で彩られた彼女たちの日常が、描写されていたように感じた。何気ない1日がユニークな“浴衣”で彩ることで「特別」な1日になるというメッセージが、持続可能性の3つの柱である経済・環境・社会の根源にある文化を存分に引き出していた。

 

■審査会場に入っての取材雑感

ライブ中継の裏側に入り、見学すること自体今回が初めてであった。この取材を通して、オンラインでの開催は今回が初めてであったが、オンラインでそれぞれが別の場所から中継するという障壁を感じさせず、いかに従来の対面での大会に近づけるかということに尽力されるスタッフの方々の努力が垣間見えた。審査員の方々も画面越しで高校生とコミュニケーションを取ったり、事前録画されていたプレゼンテーションを視聴したりしながらも高校生による作品の意図や人柄を最大限汲み取ることのできるよう尽力されていた。対面イベントをも超えるクオリティを追求する現場を見ることのできる、とても貴重な機会だった。

 


中野悠紀/関西学院大学

 


<日本遺産部門>

 

観光甲子園を見て一番感じたのは、高校生の可能性です。

 彼ら、彼女たちがどういった経緯でこの大会を知ったか、挑戦したかはそれぞれ別ではあると思いますが、能動的にあれだけの作品を作れることは、全く想像していませんでした。どの作品も、大学生顔負けの中身はぎっしりしておりしっかりとしたプレゼンでした。コロナの影響を受け、学校イベントがなくなり、大学受験、授業の形態も変わり様々な変化に対応していかなければならない私たちの世代、彼らの世代が必要不可欠な主体的に動くという能力をみせてもらいました。

 

私は、大学で美学芸術学を学び、ゼミでは映像を研究しています。映像作成にも興味はありましたが、挑戦にはいたっていませんでした。しかし今日彼ら、彼女らの作品を見て自分もやっぱり挑戦してみようと思いました。シンプルな作品から、スマホで撮影しているのにもかかわらずCMのようなクオリティの作品まで良い刺激を受ける機会となりました。

 

そして、私は日本遺産部門を担当したのですが、どの作品のクオリティも高く一緒に見ていたゼミ生、聴講生とも本当に驚きました。芸術品や文化を取り上げるチームだからか、美しい作品、それだけでなくバラエティ的にも面白い作品ばかりで間延び感もなく、食い入るように見てしまいました。字幕がおしゃれなのもこの部門の特徴でした。英語だけでなく、さらには中国語の字幕を入れているチームの、国際的な視点は見習うべきものです。

 

日本遺産の部門は、他の二つの部門と比べてさらに守り伝えていくということが重要になると考えています。その視点をブレずに組み込んでいくことは重要です。SDGsの何番にあたるかということも必要な情報ですが、その遺産がどのように守られ、登録され、どうなっていきたいのかなどそこに住んでいるからこその情報を増やしていけるとさらによい作品ができるのではないかと思います。

 

優勝した藍染を紹介してくれた、愛知県のチー厶の動画のクオリティ、統一感から学ぶことはとても多かったです。日本人からすればよくある昔ながらの町並みをどうやって動画の中に落とし込むかという部分を、編集でそれ以外の部分をそちらへのトーンにしており、テレビの作品を見ているように思いました。プレゼンテーションの部分からBSで流れていても違和感のない作品でした。特にミーティングの姿を入れていることは、本当に高校生が頑張って作っているということが伝わってきて好きな場面でした。万華鏡を、場面変換に使うという考えはとてもよく、一つの作品であることが強調され、また象徴的であるために記憶にも残りやすくとてもよいと思いました。

 

そして、観光甲子園という大会そのものが、全国大会という名前にふさわしいような大会になってきていることも嬉しいです。部活として取り組んでいる学校は、昨年からの連続決勝出場であったり、工業高校が初の出場を果たしたりとストーリーができてきています。

 

しかし、開催側わたしたちスタッフがもっとSDGsについて考えるべきだなと思わされる部分もありました。特に、審査員の性別が偏っていること、審査員の平均年齢の高さなどは次世代を発見し育てるという視点からもずれていると感じます。映像作品を評価するのですから、映像クリエイターやYoutuberからの視点、観光客になる層からの評価も必要であると考えています。

 

どんどん、初めてデジタルに触れた年齢が下がっていく時代だから応募される作品のクオリティもどんどん上がっていくことと思います。いまからすでに2021観光甲子園が楽しみです。

 


夏山空/関西学院大学

 

 

<ハワイ部門>


観光甲子園の現場に大学生として見学に行かして頂きました。僕自身大学一回生なので一年前の自分と比較したのですが、余りのクオリティに大学生のイベントなのではないかと驚かされました。そんな中からハワイ部門を見て、聞いたことを一大学生として感想を述べさして頂きます。

 

最初は京都学園中学高等学校(KGJK)の「未来を見据えたエスコスタディツアー」です。明るさと笑いの融合でハワイの魅力を伝えると言い切り出したムービーは、その言葉の通りすぐに会場は笑いに包まれました。ムービー中にインフルエンサーであるフワちゃんのキャラクターで登場したからです。NEWS形式の動画でありながら、フワチャンという明るさを取り込むことで、見るものを退屈させない工夫を感じました。それでいて、おふざけという事では決してなく、しっかりと伝えたいメッセージ性(デポジット制の説明)とユーモアのメリハリが素晴らしかったです。手作りの立体模型を使っての説明は、この動画に対する熱い気持ちを感じることが出来ました。

 

次は準グランプリを受賞されたGALAXYファンタスティックGIRLSの「ハワイ7色の魅力」です。色というテーマを前面に押し出した、このプレゼンではハワイの色んな顔色を素直に楽しむことが出来ました。一つ、一つの色とそれにまつわるハワイのモノを紹介していく構成が素晴らしかったです。なぜなら、次は何色をゲットできるのだろうか、次はハワイのどの側面を見られるのかという好奇心をくすぐられ、また同時に動画の流れを誰もが理解でき、テンポが素晴らしかったからです。この動画を見た誰もがハワイに行きたいと思うに違いありません。

 

三番目は福岡雙葉高等学校(BlueSky)によるOHANAです。これぞ、ハワイというハワイの王道を感じることが出来ました。誰もが、行ったことがあるあるいは行きたいと思われるハワイの観光地を取り上げることで、見る者を惹きつけました。しかし、ハワイの有名な観光地(キラウエア火山、プナルウ黒砂海岸、パールハーバーなど)とSDGsを上手くつなげる事で当事者意識をもってSDGsを学ぶことも出来ました。又、聞き取りやすい声、速さでの説明によりすんなりと内容が耳に入ってき、コーマシャルのような完成度にしがっていました。

 

最後はグランプリを受賞された本郷高等学校(TigiU)によるMalama’Aina~土地を敬い、愛する心をもって~です。グランプリを受賞しただけあって本当に無駄のない、考えつくされたプレゼンでした。旅のターゲットからコンセプト、事業の持続性まで具体性が非常に高かったので、見ていてイメージがしやすかったです。又、データによるソースが非常にしっかりとして、より一層現実味を感じるプレゼンでした。地球は今限界を迎えているという。ショッキングな問いかけで視聴者の心を掴み、そこからプロセスを経て又最後にあるべき姿を一緒に考えませんかと問いかけるアプローチ方法が最高でした。

 

誰もが、実際にハワイで調査が出来ない中も、まるで数か月前に行っていたかのようなプレゼンを体感することが出来ました。たった三分の動画。しかし、その三分を作る為に準備をした莫大な努力を感じました。それほど、どのグループも多大な時間をこの観光甲子園に費やし、インタビューや調査を重ねた熱量が伝わってくるプレゼンでした。大学生ながらも皆さんに本当に頭が下がる思いです。少し、上から目線になって居たら大変申し訳ございません。高校生の皆様、多くの気づきと学びを与えてくださり、ありがとうございました。