赤穂市フィールドワーク

2022.9.5~6


Never been to Ako? –みをつくしの町へ–

鳥谷 将二

 

●はじめに

 

 9月5日の6日に赤穂へフィールドワークに行った。赤穂市のメインターゲット層である20・30代の人に向けたキャッチフレーズを創作するというお題のもとで、市内の様々な施設や観光地を訪ねた。その結果、タイトルで挙げた Never been to Ako?-みをつくしの町へ-が適切だと考えた。本論では、赤穂の多様な観光資源、フレーズに込められた意味、赤穂の課題について、今回のフィールドワークを踏まえて論じる。

 

 

●第1節   観光資源

 

 赤穂は観光資源として多様なコンテンツを備えている。代表例として、食のコンテンツの塩、歴史的なコンテンツの赤穂義士がある。塩に関して、1日目に赤穂市立海洋科学館・塩の国、2日目には赤穂市立歴史博物館に行って学習した。前者では、かん水という塩分濃度19パーセントの塩水を蒸発させて塩を作り、入浜式塩田や流下式塩田の実物スケールを堪能した。後者では、塩づくりで使用していた道具や模型単位を眺め、充実した学習を行った。歴史に関しては、2日目の赤穂市立歴史博物館にて、展示品から赤穂の歴史や赤穂事件の背景を学んだ。赤穂には他にも観光要素がある。赤穂温泉や観光用に整備されたきらきら坂がある御崎、木造建築が並び北前船で栄えた街並みと名産の牡蠣をもつ坂越、塩作りの傍らに女性が生産した伝統工芸品の赤穂緞通などがある。さらに、大きく見ると、赤穂は海と山の両者を兼ね備えている。これらの点から、赤穂はあらゆる観光客のニーズを満たす町である。観光客は非日常と知らない世界を求めて旅をする。人それぞれが求めて満足するものは違う。例えば、私は今回のフィールドワークを通じて、特に海と赤穂義士に関心が向いた。山に囲まれた城下町で出身の身としては、海の風景や海産物に魅了された。また、歴史好きということもあり、赤穂市立歴史博物館での赤穂義士に関する資料も興味深かった。

 

 

●第2節 キャッチフレーズ

 

 上記のフレーズの副題を紹介する。「みをつくし」には、「身を尽くす」と、「澪標」(みおつくし)を掛けている。澪標とは船に航路を示すために打たれた杭のことである。この掛詞は『小倉百人一首』や『源氏物語』で用いられてきた和歌の言葉遊びであり、赤穂市が海に焦点を当てた観光戦略をしていると聞いたことから思い浮かんだ。つまり、漂う船を誘導する澪標のように、赤穂は観光客をうまく誘導し満足させることに身を尽くす必要がある。この副題は勧誘の呼びかけ且つ赤穂自身への訴えでもある。

  

 

●第3節 赤穂の課題

 

  赤穂の尽くすべき課題は大きく2つある。1つ目はブランド力で、2つ目は素人の観光客への意識である。1つ目について、赤穂緞通が大きな一例である。前述したように、赤穂緞通は中心産業の塩生成と強く結びついたストーリー性のある産業にも関わらず、認知の低さに悩まれていて、製造の担い手が不足している。私は実際に緞通工房を見学した。その技術力と構想力に圧倒されたが、同時に理解度の低い現実にも疑問が残った。自明であるが、赤穂緞通のブランド力があがり、物理的にも精神的にも余裕が生まれれば、これらの問題は解消されるだろう。2つ目の意識問題もかかせない。全ての観光客は来訪する土地や施設の内容に一定の理解があるとは限らない。つまり素人も考慮する必要がある。ここでは赤穂義士を例に挙げる。忠臣蔵は若者間での知名度や関心の低く、素人も多い。私は展示品を見回った際に、義士シアターというブースが角にひっそりあることに気が向いた。私は以前とある有名観光地にある記念館へ訪れたが、入館した直後に展示対象の映像を強制的に見て学習するシステムを採用していた。そのため、基礎知識がある上での館内散策となり充実した。そのような経験から、このシアターをうまく活用すれば、マニアックな玄人はもちろん、素人も楽しめるのではと思った。あくまでも一例であるが、こういった意識を持ちどう行動するかで、その土地や施設に対する評価や印象は変わるだろう。

 

●さいごに

 

 以上が、赤穂の観光事情、キャッチフレーズ、課題についての見解である。赤穂は整備やルート開発によって集客の増加を狙う余地がまだまだある。身を尽くすことで、“Never been to Ako?” と赤穂観光を促進する話題が生まれることを望む。