丹波篠山市フィールドワーク

2022.9.13~14


天下泰平と苦労の地

友重 夢芽

 

      今回、私は丹波篠山でのフィールドワークの様々な活動の中でも特に、農業の現状に関して取り上げたいと思う。福岡県の北九州市出身の私は兵庫県の西宮市に大学のために下宿しにやってきたわけであるが、兵庫県にも丹波篠山のような田園風景豊かな場所があることに驚いたのが丹波篠山に対する最初の印象である。そして里山と聞いて思い浮かんだのはのどかで自然豊かな生活、都心の喧騒から逃れることができ、自由に自分の時間を過ごすことができる場所であると考えていた。到着してからも澄み渡る空気のきれいさ、人ごみの無さ、私も将来定年を迎えたらこんな場所に住むのもありだなとのんきに考えていた。しかし、ふたを開けてみると里山には人口流出や限界集落、生物多様性の危機、害獣による被害など様々な問題があったのである。

 

 

●感心した農業の戦略性

 

 私たちは「農」の体験をしに古市にある「丹波篠山吉良農園」に郷守である吉良佳晃さんの案内の下、里山で行われている実際の農業現場を見学しに行った。私は失礼ながら農業は代々継承されるものであり、その農作や耕作の方法は時代を通して変わらず、ルーティーン化されているものなのだろうという固定概念があった。しかし、吉良さんの話を聞いてみるとそうではなく、学校給食の残飯を堆肥にしたり、粉砕した貝殻を肥料に使ったりととてもエコで経済的なだけでなく、食物連鎖を利用しながら有機農業を行っている等の工夫が凝らされていた。それだけでなく、「草のベッド」なるものを生み出し活用していた。これは、草を敷くことによって湿度を保つ役割を果たしており、また、その草原に人間が草を運び込むことによって草の高さが制限されるといったように計算されているものであった。確かに事前学習で農業や林業は50年、または100年スパンで物事を考えて仕事をしないといけないということを耳にはしていたが、こんなにも計算しつくされているのかととても感銘を受けた。この試行錯誤の仕方や持続可能性を見据えている吉良さんの計画力は、何か別のビジネスに生かせるのではないかと勝手に一人で考えるなどしていた。

 

 

●私たちが実際に触れることで知りえる丹波篠山の現実

 

 

 しかし、そんなうまくいっているように見える農業にも私たちが実際に聞かないとわからないような問題があった。それは、生物多様性が失われていることであったり、害獣が農地を食い荒らしたりするというようなことである。前者の生物多様性が失われる原因は4つあり、開発や外来種、気候変動や放置などが挙げられているという。そして今後はその生物多様性を保持し、かつ直接的に自然にも触れるという形こそ、私たちが目指すべき位置である。また、私は上にも記したように里山での暮らしは穏やかなものだと想像していたので、この話を聞いた時の想像と現実のギャップはすさまじかったように思う。

 

 

●フィールドワークを通して考えた自分と丹波篠山の将来

 

 以上の事柄を踏まえ、今回のフィールドワークを通して将来私は海外志向もいいが、丹波篠山の里山のように人口流出や限界集落、生物多様性の危機、害獣による被害など様々な問題を抱える日本の地域に目を向けるのもよいかもしれないと思った。そして、地方が食べていくには観光しかないが、その観光自体人手がいる仕事と何とも矛盾しているようにも思える条件下で丹波篠山のような地域を活性化させるためにも外部との連携は必須であると考えた。総合的な活動の時間や自然体験学習の一環として、少し離れた兵庫県内の中高生を対象に興味・関心を持ってもらうほか、現在私が所属している関西学院大学で行っているハンズオン・ラーニングのような大学生への社会探究の機会提供を増やすなど、ただ特産品や自然を売り出したものでなく、学びも含めたものにするとより注目されやすいのではないかと考えた。また、将来的に私たちは生物多様性を保持したまま自然と直接かかわっていくモデルを構築しなければならないが、今の時点で私には人の手を加えることによる自然への害は免れざるをえないのではないかと考えることしかできないため、今後考えていく必要があると思った。