丹波篠山市フィールドワーク

2022.9.13~14


その仕事、誰のため?

幸田 英龍

 

 「その仕事、誰のため?」と聞かれたら、何と答えるだろう。体裁上、誰かのためと答えるのは簡単だが、実際はどうなのだろうか。それを考えさせられる今回の丹波篠山フィールドワークとなった。

  

 

●フィールドワーク前の考え

 

私は個別指導塾とラーメン屋でアルバイトをしている。個別指導塾では、生徒の志望校合格のため働いているというのはもちろんである。(その原動力がないと続けるには難しい仕事というのも事実ではあるが、、)だが一方で、ラーメン屋ではどうだろうか。「この料理をお客様に美味しいと思ってもらいたい」と、アルバイトとしてホールで接客をしている私が思うことは難しく、正直に言うとお金を稼ぐためと考えながら働いているのが事実である。もちろん大学生のアルバイトなのでそう思っても仕方がないと思うかもしれないが、社会に出てからはそれだけではダメではないかと今回のフィールドワークで改めて気づかされた。

 

 

●今回聴いた印象的な話と共通点

 

今回のフィールドワークでは印象的な話をたくさん聞いたが、特に印象的だった方が3人いた。まず、丹波篠山吉良農園の吉良さんである。民間企業に勤めていたが、地元に貢献したいという思いで丹波篠山の農家さんになった吉良さんからは農家や農園の現状や、現在吉良さんが行っている事業の話等を聴かせてもらった。その中で特に印象に残ったのは、「有機農業の本質」の話である。吉良さんは、有機農業の本質は生態系と共存することだと言ってくださった。その中のひとつに、農薬を使わずに農業をすることが含まれている。農薬と言われる化学肥料などを使う方が農業の一時的な経済効率はよくなっていく。だが、それは現在の利益だけを見たものであり、100年先を見れば、化学肥料などを使わず農業を続けた方が農園の地力もつき、次の世代への責任も果たすことができる。これは吉良さんが仰ったことで、その時私は、この方は自分のためだけに仕事をしているのてはなく、次の世代、次の社会のことを考え、今仕事に励んでいるのだと感銘を受けた。

 

2人目は、狩人の新田さんである。狩人の仕事は正直儲からず、辞めようと思ったことも何回もあったという話をうかがった。それでも、この仕事は自分がやらなければいけないという使命感から仕事を続けることができたと聴き、吉良さんに続きこの方も、他の誰かのために仕事をしているのだとわかり、とても衝撃を受けた。

 

3人目は、デカンショ林業の辻さんである。辻さんは吉良さんと同じく、元々違う企業で働いていたが地元に貢献したいと思い丹波篠山で林業を行っている方である。今回のフィールドワークでは辻さんが作ったmoccaにお邪魔させてもらった。moccaでは、ワークショップ等行っている会員制の工房、カフェ、コワーキングスペース、木造の宿泊棟、プロットタイピングができるスペース、の五つの機能がある。このように木を中心とした活動で丹波篠山から林業を活性化している辻さんは本質をつく話をしてくださった。辻さんは日本と外国の木材の需給率のデータから、「日本の木材が現在売れないのは外国の木材の方が安いから」と言うよく聞くようなことは嘘であり、本当は日本の山に木材として使える木がなく、また日本は加工の段階でコストがかかりすぎているということを私たちに教えてくださった。このような日本の林業の状況では、木こりがどれだけがんばっても、製造所も変わろうとしないと木こりの頑張りは意味がなくなってしまう。そこで、辻さんが立ち上がって日本の林業を変えようとする姿をみて、今は安定のしない職業だが、日本の林業のために、次の世代のためにこの仕事を行っているのだとここでも気づくことができた。

 

 

●まとめ、そしてこれから

 

以上のような印象的な話を今回のフィールドワークで聴くことができ、自分の考えを引き締めるきっかけとすることができた。3名とも自分のためだけでなく、誰かのため、社会のため、次の世代のために働いており、その姿はとても輝いて見えた。私は来年から社会人になる。もし私が社会に出て「その仕事、誰のため?」と聞かれたら、「他の誰かのため」.「100年先の日本のため」とすぐに答えられるだろうか。もちろん確信はないのだが、自信を持って答えられるように常に責任感をもちながら仕事を遂行していく。