神戸港フィールドワーク

2023.9.3


時空を超えた心の動きに出会う神戸の魅力

福永彩/神戸大学

 

〇はじめに

2023年9月3日、兵庫県神戸市でフィールドワークを行った。1日という短い時間だったが、なじみのある神戸で、時空を超えて様々なことに心動かされる濃密な時間を過ごすことができた。フィールドワークで実感した神戸の魅力は、「多様な感動を得られる」に集約される。山や海といった地理的特色から得られる感動や癒し、阪神淡路大震災から華麗な復興を遂げたという希望。この2つの心の動きを一度に実感できる街として神戸の観光をPRすることができると考える。

 

〇“現代“から得られる感動・癒し―ウェルネスツーリズム―


栄えている港も六甲山もある神戸。その特徴を生かした六甲山からの夜景は有名だが、神戸は海からの景色も楽しめる。

神戸リゾートクルーズ・boh boh KOBE号への乗船では、海から美しい神戸を眺めることができた。クルーズの魅力は景色だけにとどまらない。船内では、ウェルネスツーリズムの一環として潮風を利用した海洋療法を行った。今回は船上で育てたハーブが入った氷水に手首を浸けて潮風で乾かす、自律神経の安定を目指す体験だった。さらにこのクルーズはペット同伴を可能にするという画期的な取り組みや神戸空港へ離発着する飛行機を至近距離でみる大迫力な体験を実施するなど、「船内で景色や食事を楽しむ」という今までのクルーズ体験を越えた、心身が癒される独自の体験が可能だと感じた。これらの観光体験はリアルタイムで直接的に感動や癒しを感じることができる点で魅力的だ。

 

 

 

 〇“過去”を知り、“未来”を考えることから得られる心の動き―ダークツーリズム―

現在の発展した街並みからは全く想像もつきにくく、未経験の若者も増えているが、神戸は兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)を経験した地域だ。1995年1月17日早朝に起こった地震は、6433もの命を奪った。私たちはその経験や教訓を継承し、減災・防災について情報発信を行う拠点として作られた「人と防災未来センター」にも訪れた。神戸で起こったとは信じられないほど壊滅的な映像や体験談に大きな衝撃を受け、恐怖を感じた。

だがこのセンターは、過去のものとなった被害を淡々と伝えるだけでなく、災害からどのように神戸が立ち直っていったかという過程や災害に現代人が備えるためにはどう行動すべきかといった未来の視点からも様々なことを私たちの心に伝える。震災からの復興の過程で住民の絆が深まったエピソードや災害への備えの話を聞くと、災害と共存していく未来に少し希望が持てた。むやみに災害を怖がるのではなく、「自助」をどのように実践していくかの大切さを学ぶことができた。

 

 

〇終わりに


今回のフィールドワークでは、多様な心の動きを神戸という一つの街で体感できることが新たな発見だった。過去の震災を知る体験、現在の、クルーズで神戸全体の良さを知る癒し体験、未来の災害対策に思いを馳せる体験などなど、時を越えた感動体験が可能だ。災害で大きな被害を受けながらも復興して都市の魅力を発信し続ける神戸に、誇りを持つこともできた。

 

さらに印象的だったのは、この魅力を地元の企業や人々が世界に向けてアピールし、観光資源にしていることだ。冒頭に登場したboh boh KOBE号を運営する会社さんは、神戸の企業として港湾エリア全体の文化づくり、発信を行っている。船内で神戸で有名な地酒を販売したり、神戸の水をブランド化して販売したりと、海やクルージングと直接的には関係のないことにも事業展開されており、神戸という街を愛する地元発企業の熱意も実感した。


今後は、災害の風化を防ぐことが神戸全体の課題となってくると考える。継承には、震災を知らない世代を巻き込んでいかなければならない。そこで様々な面で常に心を動かす神戸の魅力を、次世代の若者にまず知ってもらうことが重要だ。神戸の魅力を信じ、ターゲットを定めて発信することが求められると考えた。