神戸港フィールドワーク

2023.9.3


震災から復興、そして地形を学ぶ、世界に誇る美しい神戸の魅力。

菅野有紗/同志社大学

 

●復興の軌跡と海外への発信


人と未来防災センターでは、阪神・淡路大震災の当時の状況や、復興の軌跡についてを学びました。当時の地震の凄まじさを大型スクリーンと大音量で体感するシアターは、体験する前からかなりの緊張感がありました。実際に被災された方々は、ここで体感するものとは比べ物にならないくらいの恐怖を感じたと思います。上映時間は7分間ですが、この間様々なことを考えました。「もし、被災していたらどうなっていたのか。」「このような状況にあったらまず何をしようか。」「そもそも何かできるのだろうか。」そして「今の神戸はどのようにして作られたのか。」長いようであっという間の7分間で、普段は考えないような様々なことが私の頭の中に浮かびました。大地震ホールでは、復興に至るまでの軌跡をドラマにしたものを観ました。このドラマを観て思ったことは、人はいい意味でも悪い意味でも忘れっぽいということです。被災し、家族や友人を失う、身近で人の死を体感する、あるいはそれ以外に心の傷を負う人はたくさんいます。彼らは皆、悲しみに暮れ、生きる希望を失うかもしれない。しかし、隣人同士で助け合い、一歩一歩未来への道を歩む必要があります。そして神戸という町もそのようにして復興の道を辿ったということを実感しました。震災発生から、少しずつでも歩みを進めることが出来たのは、人間の記憶が過去のみに留まるのではなく、新しいものに移り変わることが出来るからでしょう。しかし、完全に忘れてしまってはいけません。時が過ぎるにつれて、世代が交代していき、当時を知る人が少なくなる、そうして震災が人間の記憶から消えていくということは阻止する必要があると感じました。人と防災未来センターには、大人から子供まで様々な世代の方が訪れていました。また学校などの団体の方々や海外からいらした方もいました。震災という少し重たい題材ではありますが、ここではそうした学びを様々な観点から学ぶことができることができます。また、センターの方々が積極的に話しかけてくれて、地震のメカニズムや、身を守る方法などを教えてくださったことも印象的です。もう一つ印象に残っていることは、先ほども書いた、海外からの観光客の存在です。3階にある震災の記憶フロアでは、備え付けのモニターで当時に関する記事などを読むことが出来ますが、英語でも読むことが出来るようになっていました。実際に私も読んでみましたが、少し文字が小さいですが日本語で読むのと同じ内容を把握することが出来ました。外国語が出来るスタッフの方が英語で案内をする様子も拝見しました。そして、記憶フロアの最後に掲示されていた感想のお手紙には英語で書かれたものもあったことが印象的でした。海外には、日本と同じように地震が発生する国もあれば、珍しい国もあります。地震という災害が彼らにとって、どのような印象を与えたか、観光を通して日本という国を知ってもらうには、文化や歴史に加えて、この地形から起こる自然災害も要素の一つになるでしょう。大学には日本の地形や災害について学んでいる留学生も多くいますが、視覚、聴覚、触覚などを通して膨大な情報量を取り入れることが出来る人と防災未来センターでは、誌面で学ぶ場合に比べて得られるものも多いはずです。また、ここで体感したものを得てからみる神戸の街並みはまた違った見え方をするかもしれません。掲載した写真はまさにそのうちの一つです。これは神戸港震災メモリアルパークで撮影しました。このように復興してもなおその一角に残された当時の被害の大きさを物語るものは、人と防災未来センターでの学びをより身近に結びつける存在でした。

 


●五感すべてで感じる神戸の魅力


2枚目の写真はbohboh Kobe resort cruiseでのクルーズの際に撮影したものです。手に持っているのは、船上で作られたハーブが用いられたレモネード。こちらは香りと味を楽しむだけでなくSDGsの取り組みとしても魅力的です。船上ハーブは飲み物のみでなく、タラソセラピーという海という環境を利用した健康療法にて、手首を冷やすことで体温調整をするクナイプ療法として用いられていました。この療法は、船上にいる様々な世代の方々が夢中になり、楽しんでいました。そしてクルーズでの魅力の一つに、神戸の地形を学ぶことが出来るということもあります。海から見る神戸港は美しく、沖に進むにつれて見えてくる島々は、日本のどこにあたるのか、実際にYDHのメンバーも興味津々でした。今回は日中のクルーズでしたが、サンセットクルーズの際に見ることが出来る3回の日の入りは、まさに神戸ならではの地形を生かした魅力だと思います。五感すべてで感じる神戸の魅力は、国や世代を超えて学び、楽しむことが出来る、観光には欠かせないものに感じました。