豊岡市フィールドワーク

2023.11.23~24


豊岡の伝統と革新が交わる場所、「カバンストリート」

近藤 帆海/立命館大学

11/23から11/24にかけて、私たちは兵庫県豊岡市を訪れ、観光についてのフィールドワークを行った。豊岡市は平成17年に1市5町村が合併して形成されたまちで、6つの地域が食、自然、温泉、アート、城下町、伝統産業など、様々な特色を持っている。何度も訪れ、何日も滞在したいと思わせてくれる、このさまざまな表情を持つ豊岡市のうち、本レポートでは「カバンストリート」に焦点を当て、そこで得た知識と見解を記していく。

 

●地場産業と商店街活性化を目指す「カバンストリート」

‎ 日本一のカバンの生産量を誇るまち豊岡市。「地場の産業と商店街の活性化」を目的として、2005年に「カバンストリート」は誕生した。ここには、カバンの販売店だけでなく、クリーニング店やカバン職人共同のアトリエ、お財布専門店と併設のカフェなどが存在し、多様な体験を提供している。また、作業の様子を外から見ることもでき、職人技を間近で感じることができる。さらに、カバンをモチーフにした仕掛けが通りに点在し、新しいフォトスポットやデザインにこだわったバス停もある。「カバンストリート」は、豊岡市を代表する観光スポットの一つであり、地域の活気と伝統が融合した素晴らしい場所である。

 

  

●豊岡の新たなものづくり拠点 "Maison Def" と "Apartment"

‎ 「Maison Def」とその姉妹店「Apartment」は、新たなものづくりの拠点として誕生し、洗練されたカバンの提供を目指している。まず「Maison Def」では、作り手の思いが込められたバッグやウェアが五感を刺激する特別な空間で、展示・販売されている。また「Apartment」はカバンストリートの中心に位置し、ものづくりの拠点としての役割を果たしている。3フロアから成り、クリエーターの作品を販売する1階のショップエリアから、クリエイターが新しいアイデアを形にするアトリエまで、様々な活動が行われている。現在、13名のクリエイターが在籍し、豊岡の伝統と未来を結ぶプラットフォームとして注目されている。

 

 

●サステナブルな商品を展開する 

"Toyooka Kaban Artisan Avenue"

‎ 「Toyooka Kaban Artisan Avenue」は2014年にオープンし、200種類以上の作品が展示・販売されている。地域に根ざした地場産業として、環境に配慮した製品も展開されており、「for the Blueシリーズ」では海洋プラスティックごみの削減と美しい海洋環境の維持を目指している。また、「FEED BAG 火山灰染めシリーズ」は、神鍋山の火山灰を使用し、手染めによって仕上げられた製品で、環境に配慮された「土に温る」エコロジー商品として評価されている。豊岡鞄は伝統とサステイナビリティを融合し、地域との連携を強化しながら、社会への貢献を果たしている。

 

 

● カバンストリートにおける課題と解決

‎ 「カバンストリート」では、現在多くの店舗でシャッターが下り、観光客に閉塞感を与えている。この背景には、商店街が江戸時代から続く歴史を持ち、基本的には持ち家ばかりであるため、外部からの介入が難しいことが挙げられる。この問題に対処するためには、商店街の歴史や伝統を尊重しつつ、持ち主との協力を強化し、共通のビジョンを築くことが重要である。持ち主を巻き込んだプロジェクトチームを組織し、商店街の未来を共に築き上げる姿勢が必要だ。また、シャッターにおしゃれなデザインを施すことでの、景観を損なわない新たなフォトスポットとしての活用も有効である。一方で、地面や天井の古びた印象も改善が必要である。ただし、これには税収の利用が伴う。市民の理解を得るためには、投資の必要性とその結果得られる利益を明確に伝える必要がある。市民参加型のイベントやワークショップを通じて意見交換の場を設け、市民の共感と協力を促進することが成功につながる。加えて、市民の共感を得た上で景観の改善に臨むのであれば、石畳や洋風のライトの導入などレトロな街並みの創出が商店街のイメージ向上に繋がり、観光客の訪れを促進できると考える。「カバンストリート」の再生・活性化は、単なる投資だけでなく、共同体の結束と未来への投資でもあることを理解し、具体的な行動に結びつけていくことが不可欠である。

 

● おわりに

欲しいものが翌日に手に入る現代において、今や時間と距離が新しい価値を生み出しており、大都市圏からカバンストリートまでの道のりは、まさに旅のプロローグとエピローグの役割を果たす。この洞察を得られた今回のフィールドワークは、観光について考える私たちYDHにとって有意義な時間であり、迎え入れてくださった豊岡市の皆様には心から感謝申し上げたい。